「平成30年7月豪雨」で被災した
種を守る農家へのご寄付金活動。
温かいご支援、改めまして本当に、
ありがとうございました。
皆様からの寄付金は、
壊滅的な被害を受けた長崎県I市の
Mくんに託すことを決めました。
下記にご報告させていただきます。
Mくんは2014年11月に独立。
研修を入れると7年目、
独立してから5年目の若手農家です。
彼は実家が農家でない上に、
新規就農の補助を受けず独立しました。
彼の暮らす市は有機農業の新規就農者への
補助は原則行なわないのです。
ご存知の方は多いと思いますが、
実家が農家でもない上に、
新規就農の補助金すらもらわずに、
専業農家としてやっていくのは、
本当に、本当に厳しいことです。
その条件に加えて無農薬・無化学肥料・
自家採種中心の農業へのトライは、
さらに輪をかけて何段も厳しい道であり、
その道をMくんは強い意志で歩み続けてきました。
そんなMくんの中心的な畑が、
昨年の台風とそのあとの豪雨で、
壊滅的な大被害を受けたのです。
もともとイノシシの被害と闘っていた
時に台風での大被害。
懸命に復旧作業に取り組むも
さらにその数週間後の豪雨で石垣がくずれ
土が流れ込み、そこからまた
イノシシの被害。
彼が丁寧に育ててきた夏野菜が全滅しました。
被害を受けた作物は、えびす南瓜、
ズッキーニ、アロイトマト、青ナス、
カリフォルニアワンダーピーマン、
八丈オクラ、万願寺唐辛子、
鷹の爪唐辛子、ヘチマ、
あばしゴーヤ、薩摩大長レイシ、
大浦太ゴボウ、四角豆の15種です。
野菜だけではありません。
その畑は研修時代からずっと
彼が根気強く土を作ってきた畑です。
厳しい状況の中、土と向き合い、
作り上げてきたその数年間を
全て奪ってしまうような被害でした。
さらにその数ヶ月後、
復旧作業の無理が重なり、
彼の腰痛が再発。
1ヶ月の入院を余儀なくされ、
医者からは農家をやめた方がいいと、
ドクターストップがかかります。
しかし、どうしても彼は、
たねを採る農業の道が諦めきれず、
今、リハビリをしながら、
再出発の道を探っています。
当初、豪雨で被害の大きかった
中国・四国・関西・中心に
支援先を探しておりました。
「種を守る農家への寄付」
と銘打っておりましたから、
当然、自家採種を中心の農家を、
探したのですが、該当する農家を、
見つけることができませんでした。
僕の力不足もありますが、
そもそも、自家採種をベースに、
生業を立てている農家が圧倒的に、
少ない現実を改めて思い知りました。
また自家採種ベースの農業は、
気概と覚悟がないとトライできない、
厳しい農業。だからこそ、
「安易に寄付を受け取れない」という
スタンスの農家さんが多いのです。
九州も含めて、と範囲を広げた時、
Mくんが真っ先に候補に上がりました。
なぜなら僕が知る限り、この豪雨で、
もっとも壊滅的な被害をうけた
種とり農家は、彼だったからです。
ただ、彼は「受け取れない」として、
固辞しました。
大きな被害を受け、農家として、
言葉では言い表せないほど、
難しい状況に追い込まれているにも
関わらず寄付を受け取ろうとしない。
その事実だけでも彼の誠実さを、
証明しているように思います。
豪雨から約9ヶ月間、
寄付先の候補を考え続け、また
彼との対話を続けた結果、
皆様からお預かりした大事なお金を
託すのはMくんしかいない、という
結論に至りました。
彼はまだ腰を痛め、リハビリ中です。
だから、今はまだ、渡せません。
彼と僕はもう5年の付き合いです。
本当に、真面目な真心のある素晴らしい
青年です。ただ「大変だから」という
理由でなく農家としての力量と技術、
種を守ることへの哲学と信念
いずれもが素晴らしい農家です。
ただの温情で、皆様の大切な
ご寄付を託すことはできません。
しかし、彼の能力と種への強い意志を、
この豪雨で潰してしまうことは、
あまりにも惜しいと思うのです。
何より、彼の野菜は本当に美味しい。
とても緻密な、優しく強い味がします。
しかもまだまだ伸び代を秘めています。
皆様からの寄付金は彼が再出発する
その時まで、もうしばらく、
僕に預からせていただけないでしょうか。
寄付金の総額と内訳は、下記の通りです。
寄付金総額|533,788円
内訳
|皆様からの寄付 277,788円
|私達からの寄付 100,000円
|2018年7月~8月の売上の一部 153,000円
3人目の子供が生まれたばかりの
Mくんは今、理想と現実の狭間で
どう生きるべきか、模索している最中です。
時間はかかるかもしれません。
彼が再起するその時を、焦らず待ち、
種とり農家として新しい一歩を
踏み出すときに、正式に、
皆様からの寄付金を渡したいと思います。
もしも彼への寄付がためらわれる
場合はご遠慮なく、お知らせください。
お預かりした寄付金をお返ししたいと存じます。
***
長文を読んでくださり、
誠にありがとうございました。
ご支援くださった皆様に、
いつか彼の野菜を食べてほしいと、
心から願っています。
そのために、私たちはできる限り、
彼の再出発をサポートし、応援したいと、
思っております。
彼が再起したその時には、
必ずまた、ご報告いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
2019年4月11日
オーガニックベース代表 奥津爾