松本と吉祥寺

presented by ORGANIC BASE

絵│田所真理子、題字・言葉│ウチダゴウ

写真|渡邊哲也(山鳩舎)

松本の風を運ぶ料理と展示とお土産と。

program:

松本の風を運ぶ料理と展示とお土産と。

展示

詩|ウチダゴウ
絵|田所真理子
写真|モモセヒロコ

松本土産

詩集・詩の雑貨|ウチダゴウ
冊子・ポストカード|田所真理子
CD|玉井夕海
珈琲豆・ポストカード|山鳩舎
松本箒|米澤ほうき工房
コンフィチュール|Chez Momo
布ブローチ|chiho yoneyama cogin works
真鍮アクセサリー|mauve
クラフト雑貨|PomPom
キャンドル|TOCA by lifart...
ポストカード|122press

料理ディレクション|金子健一(つむぎや
展示ディレクション|菊地徹(栞日
企画|オーガニックベース

infomation:

松本と吉祥寺

松本と吉祥寺

日 付|9月3日[木]-9月23日[水・祝]
時 間|12:00-22:00(LO21:00)
会 場|食堂ヒトト
東京都武蔵野市吉祥寺南町1-6-7-3F
Tel. 0422-46-0337
詳しい地図

  • 火曜定休(ただし22日[火・祝]は営業)
  • 水曜日は展示のみ営業(12:00-17:00)

event:

opening

松本の風と音玉井夕海ライブ

9月3日[木]19:00-21:00
第一部│トーク(聞き手:田所真理子・奥津爾)
第二部│玉井夕海ライブ
料 金│2,500円(ワンドリンク付)
会 場│食堂ヒトト
ご予約│
・Tel. 0422-46-0337 ヒトトまで
 (受付は木-月曜、10:00-22:00)
・Mail. hitoto@organic-base.com
 件名を「9月3日ライブ希望」として、
 お名前、人数を明記の上、お申込みください。

gest 01:
玉井夕海
玉井夕海たまい ゆうみ

東京芸術大学建築科在学中に、宮崎駿主催アニメーション演出家養成講座「東小金井村塾 2」 修了。(この縁により、映画「千と千尋の神隠し」リン役に抜擢。)
天草の海から受けたイン スピレ ーションを元に作り上げた映画「もんしぇん」では脚本(山本草介・海津研との共作)、主演、音楽を担当。その後は女優として『空中キャバレー』(串田和美 演出/まつもと市民芸術館)や、『南へ』(NODAMAP・野田秀樹 演出/東京芸術劇場) などの演劇作品へ参加。2012年は天草を舞台とした映画『NOT LONG,AT NIGHT』の主演を務め、同作は第25回東京国際映画祭「日本映画・ある視点部門」にノミネート。
2013年『渋さ知らズ大オーケストラ』でゲストヴォーカリストを任され、以降「渋さ知らズ」メンバー。2012年6月から1年間限定で長野県松本市に活動の拠点を移していた。
9月27日(日)には、初のフルアルバム「MOTHER SUN」が地底レコードより発売される。プロデュースは渋さ知らズの不破大輔。


closing

松本の人と食

9月23日[水祝]18:00-21:00
第一部│菊地徹トーク(聞き手:奥津爾)
第二部│金子健一(つむぎや)の晩ごはん
料 金│5,000円(フリードリンク付)
会 場│食堂ヒトト
ご予約│
・Tel. 0422-46-0337 ヒトトまで
 (受付は木-月曜、10:00-22:00)
・Mail. hitoto@organic-base.com
 件名を「9月23日参加希望」として、
 お名前、人数を明記の上、お申込みください。

gest 01:
菊地徹
菊地徹きくち とおる

1986年生まれ。静岡出身。
学生時代をつくばで過ごし、就職の関係で松本へ。軽井沢への転職を経て、松本に戻り、2013年、コーヒースタンドとギャラリーを併設した、リトルプレスのセレクトショップ「栞日」開業。「ALPS BOOK CAMP」主宰。

gest 02:
金子健一
金子健一かねこ けんいち

料理研究家。
2005年マツーラユタカとともにフードユニット「つむぎや」を結成。和食をベースにしたオリジナル料理を雑誌、書籍、イベント、ケータリング、料理教室などで提案。金子健一名義で8月後半に新刊「ぱんぱかパン図鑑」(地球丸)を発売予定。結婚を機にご縁ができた松本もかれこれ10年。今は義父の田畑を手伝いながら家族と暮らす松本と仕事場の横浜を行ったり来たりしている。

message:

kichijoji

吉祥寺より

奥津爾│オーガニックベース

中学一年の冬、生まれてからずっと慣れ親しんできた吉祥寺を離れ、松本市にほど近い三郷村(現安曇野市)に母と二人で移り住みました。

北アルプスや美ヶ原、四方が山に囲まれた松本盆地の冬は、東京では体験したことのない芯からの冷え込み。どこまでも透明な空気と雑味のない澄みきった水の流れ。通学路にはリンゴ畑が広がっていて、振り返れば常念岳の美しい山容。今でも眼をとじると、あの時の強い印象が甦ってきます。

週末になると、同級生と当てもなく松本へ行くのが習慣でした。どんぐりでパスタを食べて、パルコをぶらぶらして、閉店してしまった喫茶山小屋でお茶をして。何も知らない中学生ながら、松本と吉祥寺は同じ風が吹いているんだな、と思っていました。行き交う人の雰囲気も街の空気も、どことなく似ている。

母を残して東京の高校に進学した後も、結婚するまで年に4、5回、松本に通い続けました。ある土地に対する、言葉にできない愛着を「郷愁」というならば、僕にとってそれを感じられる唯一の場所が、松本だったように思います。

結婚し、子どもを授かり、松本に行くこともほとんどなくなりました。3年前に母を亡くし、時を同じくして実家を売ってからは自分の中で松本との繋がりもプツンと切れてしまったような喪失感がありました。だからこそ、松本と、何かがやれたらと、ずっと思っていました。

そんな個人的な念願を、栞日の菊地さんをはじめとする松本の気骨ある皆さんが実現してくださいました。

僕の知っている松本は、人を決して挑発しない。背伸びもしない。常に自足して、だからこそ、いつも優しい風が吹いている。それは、かつての吉祥寺にも吹いていた懐かしい風のように思います。

この小さな企画を通して、足を運んでくださった皆様に、そんな松本の風を、懐かしい吉祥寺の風を感じていただけたら、嬉しいです。

matumoto

松本より

菊地徹│栞日

毎年5月に国内最大規模のクラフトフェアが開催され、著名な作家のアトリエやギャラリーショップが点在する松本は、近年「クラフトの街」として注目を集めています。

静岡で生まれ育ち、学生時代を過ごした茨城を離れ、信州に来てから、もうじき5年が経ちますが、移住の理由が旅館への就職で、観光案内も仕事のひとつだったこともあってか、松本の当初の印象は、やはり「クラフトの街」でした。

しかし、暮らすうちに、それはこの街のひとつの側面としては正しいけれど、もちろんそれだけが松本ではないし、むしろそれはこの街が、外からの評価への返答として最近覚えた、やや余所行きの顔であるように思えてきました。

この感覚は、その後、転職で一度松本を離れ、1年間軽井沢に住んでいた時期に、確かな輪郭を持ち始め、松本に戻って店を始めて以降も、変わらず強まり続けています。

では一体、何が松本を松本と足らしめているのかと言われれば、それはやはり、この街の背景として悠然と連なる北アルプスの山並みであり、この街に渾々と湧き出でる清らかな水の流れであり、その空気の中で呼吸することを選んだ、人々の日々の営みではないでしょうか。 自身、結局出戻って、この街に店を構えた決め手は、山と水と人でした。この土地を選んで、この街で心地よく暮らそうとする人たちには、言語化せずとも共有できる、気概や自負に似たものがあります。銘々それぞれの題目を追い駆けていて、互いにそれを見護っている、そんな寛容さが漂っています。個人店主もユーモアあふれる一匹狼ばかりですが、その群がらないコミュニティの風通しのよさこそが、この街の魅力そのものです。

いま知っている松本は、地に足のついたそれぞれの生活が、無理なく営まれている場所です。民藝、クラフトはもちろんのこと、演劇も、音楽も、アートもあって、駅から徒歩圏内に多様なカルチャーとその担い手が混在する、コンパクトで豊かな城下町です。一方で、この街にはまだまだ欠けているピースも多く、大いに伸び代あり、とも感じています。その文化的ポテンシャルを引き出すトリガーは、東京を含めた他の地域との対話にあるのではないか、という仮説を立てていた矢先、良縁をいただいた街が吉祥寺でした。

今回は、暮らす中で見えてきた普段着の松本を、展示と手土産の販売を通じて、ご紹介できたら、と考えています。以前から、そこに引き寄せられ、集う人たちの気質に、松本との親和性を感じていた吉祥寺での企画とあって、どんな新しい種が撒かれていくのか、今から楽しみにしています。中央線で結ばれている、ふたつの街の会話から、誰かの胸に小さな何かが芽生えたのなら、それは望外の幸せです。