種を蒔く料理展江口研一

花芯白菜とニシユタカの
オリーブオイル・ソテー
  • 黒田五寸人参と海老の真薯
  • 黒田五寸人参のブルー・ポピーシードあえ
  • 花芯白菜、イエロートルティーヤ、黄カリフラワーと豆乳のソース(レンズ豆添え)
焼きネギ&
キンメ鯛干物のそばの実あえ
(炒ったものと炊いたそばの実)

岩崎さんの畑を訪ねると野菜が絶妙なバランスで育てられていることに気づきます。多様な野菜が交雑しないための配置など、僕らには見えない秘密をたくさん持っているのだと思い、じっと見てしまいます。そんな岩崎さんの畑で料理するのはこの上ない喜びですが、野菜の花が咲き乱れる季節は格別です。花も種もしっかりと野菜の味がします。今回は菜の花も添えた花芯白菜と、ニシユタカ、黒田五寸人参に岩崎ネギを選びました。海老真薯に人参はよく馴染み、じわじわと火を通した人参にポピーシードのしゃくしゃくとした食感を加えました。ネギの甘味もキンメの塩気と合います。そして今回協力を仰いだSaiさんはフォトグラファーですが、表現として陶芸もやっているという珍しい例でしょう。Saiさんの器を見る時、僕はモランディの静物画を想起しますが、本人は違うというかもしれません。せっかくの静謐な器に少し盛りすぎでしょうか。そこは味わってもらいたい気持ちが溢れてしまったということで。


料理
江口研一food+things)
Saiphotograph Ceramics
写真
Sai
江口研一

江口研一(food+things)
食べたことのない味、見たことのない食材を求めて旅するように料理を。その土地で食べられるものはコトバと同じように文化と直結します。そこに暮らす人たちの物語と一緒にごはんを提供します。

選んだ野菜

花芯白菜+ニシユタカ+黒田五寸人参
(+黄カリフラワー+岩崎ネギ+長崎赤かぶ+畑菜)

黒田五寸人参

長崎を代表する伝統野菜といえば、この黒田五寸人参。
岩崎さんが40年前に最初に自家採種した野菜であり、最も自家採種が難しく手間がかかる野菜でもある。昭和10年から20年にかけて、江戸時代にオランダから伝わった長崎人参と丸山五寸人参の交雑の中から、長崎県大村市の黒田・吉田両氏が改良・育成したと言われている。

岩崎さんにとって自家採種の原点。毎年、自ら採種してきた黒田五寸人参の隣に市販の種で育てた黒田五寸人参を育てて、長年の自らの選抜の人参の変化を比べている徹底ぶり。市販されている黒田五寸人参に比べ、岩崎さんが自家採種しているそれは形も身も締まってより充実し、食べ応えが全く違っている。もはや岩崎五寸人参と言っても過言ではない。

5月のはじめ、岩崎さんの畑で白く半円の美しい花が咲き誇る姿は圧巻。甘い匂いに誘われて様々な虫の羽音が響く景色を、ぼくらは後世に残さねばならない。


花芯はくさい

長崎島人菜、山東菜の仲間で、結球しない、半結球の白菜。歯が柔らかくて甘く、サラダにも煮物にも炒めても漬物にも美味しい。 収穫時には遠目から見ると大きな花が咲いているように見える。白菜の仲間の中では日持ちも悪く、寒さに弱く、非常に不揃いなのだが一般的な結球白菜には感じることのできない深い味わいがあり、岩崎さんが長年大事にしている野菜である。

種を蒔く料理展

船山義規

器 ‖イタリアの古い器
写真‖安彦幸枝